Soft Territory かかわりのあわい


出品作品:まじらう地点
制作年:2021年
素材: 岩絵具、水干絵具、胡粉、雲母、染型(北川織物)、麻紙、木製枠

撮影:麥生田兵吾


Soft Territory かかわりのあわい
滋賀県立美術館リニューアルオープン記念展

会期:2021年6月27日(日)~2021年8月22日(日)
会場:滋賀県立美術館(〒520-2122 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1)
主催:滋賀県立美術館

https://www.shigamuseum.jp/exhibitions/196/

【展覧会概要】

 テリトリーとは、生き物のなわばりのこと。食べるものを手に入れ、仲間やパートナーとともに日々の生活を送るフィールドであり、時には命をかけて守り、奪うもの。そんなテリトリーという言葉からは、生き物の命がかかった鋭さや、他者を拒絶する頑なさが感じられることでしょう。

 

 そして私たち人間の世界では、国家間の戦争、地域間の紛争、家と家、家の中での諍いなど、テリトリーを守ろうとするあまり、自分のつながりに含まれないものを排除しようとすることもあります。さらに新型コロナウイルスの感染拡大が、人と人とのつながりを分断し、かかわり方のかたちを変えてしまった結果、これまでとは異なるテリトリーの姿が生み出されつつあります。

 

 そんな今だからこそ、テリトリーについて改めて考えてみたいと思いました。テリトリーを形作る境は、交易が行われたりパートナーと知り合ったりする場所、未知のものと出会い、新しいものが生まれる場所でもあります。そこで生まれるもの、出会えるものが魅力的だからこそ、私たちは時にテリトリーの境目を目指し、その経験をもってこれまで成長してきたのでしょう。そんな「かかわりのあわい」とでも言うべきテリトリーの境目を形容するのは、鋭さや頑なさなどではなく、やわらかさ、ではないでしょうか。

 

 滋賀県立美術館は、約4年間の休館中に美術館というテリトリーを離れて、県内のさまざまな地域に入り込み、3回にわたってアートスポットプロジェクトを開催してきました。その集大成とも言える「Soft Territory かかわりのあわい」展では、滋賀にゆかりのある12人の若手作家とともに、かかわりのあわいで生まれるものを見つめ、かろやかでやわらかなテリトリーのあり方を探ります。


【ステイトメント】

 滋賀の余呉、朽木、奈良の明日香村、香川の離島にある空家などをリサーチし、そこに残された家財道具や 日用品、置物、放置された庭の植物、あらゆる場所にあった事物を画面上で継ぎ接ぎしています。 過去と現在、遠くと近く。それぞれの地点は、少しずつ変化しながら、距離をおきながら、時に途切れてはまた接続し、繋がっています。所在も、時間も越えて、画面の中で隣り合う事物が、新しい距離で重なり、 関係を作ります。

 絵画の間にある隙間や構造物を介して、その外側にある環境や鑑賞している人の気配を感じられるようにしています。また、今回の作品は画面を横断する景色の中を作品の隙間を利用して行き交うことができます。 作品の裏側には北川織物工場の染型を使用して胡粉で施した模様が、表側に描かれたイメージと重なり、振り返って作品と対面した際には異なる印象を感じます。鑑賞者は任意の位置から絵画に相対し、自らの身体を含めてイメージの複層性の中に重なります。

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