飛鳥アートヴィレッジ2017「ほどけたもの語りとの邂逅」


出品作品:暮らしと様相
制作年:2017年
素材:岩絵具、水干絵具、金箔、銀箔、木製パネル、木製枠(協力:松田建具)


飛鳥アートヴィレッジ2017「ほどけたもの語りとの邂逅」

会期:2017年11月18日(土)〜11月26日(日)
会場:犬養万葉記念館
プログラム・コーディネーター:山中俊広(インディペンデント・キュレーター)
主催:「Creative飛鳥・未来への風」実行員会

https://www.asukamura.jp/creative_art_2017.html


【概要】

 村外の若手アーティストが、明日香村民との交流を通じて、「あすか」を題材にした作品を制作・発表するプログラム『飛鳥アートヴィレッジ』は、今年度で5年目の開催となります。今年度も南都明日香ふれあいセンター犬養万葉記念館を会場に、公募で選出した3名のアーティストによる展覧会を開催いたします。

 今年のアーティストたちは、明日香の人々の暮らしの痕跡が残る場所に共通して関心を寄せています。村の中心地から山間部にも足を運び、空き家やお墓などの過去の暮らしのイメージが残る場所や、暮らしに密接な風習がいまも実際におこなわれている現場を頻繁に訪れました。さらにその場に関係する村民からさまざまな思い出話を聞いて、作品制作の素材を集めてきたことも共通しています。

 いったん人々の手が離れ、記憶が薄れつつあった場所の扉が、村民との出逢いを機に再び解き放たれ、同時に村民の記憶の中に仕舞い込まれていた思い出話の断片にも触れる体験が、アーティストたちの取材の中で度重なりました。過去の逸話と現在の風景をつなぎ合わせ、そしてそれらの余白を埋めていくために、各々の想像力と表現手法を駆使して、現代に息づく「あすか」の物語を情景として紡いだ作品を展開していきます。

 暮らしのかたちが画一化されていく現代において、「あすか」の土地が培ってきた独自の歴史や風土、風習が、いまの明日香の人々の暮らしにどのような作用を与えてきたのか。今年のアーティストたちはその誘因や過程に強く惹きつけられ、各々の作品制作への動機になったように思います。今年も3名の作品を通じて、「あすか」の本質や魅力を再発見する視点を、新たに見い出す機会になれば幸いです。


【ステイトメント】

 明日香村で私は、かつて誰かが生活を送っていた空き家や、現在も生活を営まれている民家を数件取材した。薄暗い室内には、煤や埃をかぶった家具や生活用品が置かれ、窓の外には今にものみ込まれそうなほど、鬱蒼と草木が生い茂っていた。誰かが生活の中で施した設え、家具や家財に残るひずみやしみは、そこにあった暮らしや、一個人の他愛も無いエピソードがいくつも刻まれているように感じた。そこに住み、暮らしている人にしかわからないようなことを探るように、明日香村に点在していた「暮らし」とその「様相」をひとつずつ集め作品に落とし込んだ。

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