瀬戸内国際芸術祭2022 SETOUCHI TRIENNALE 2022


出品作品:過日の同居2022 / staying in past days 2022
制作年:2022年
素材:岩絵具、水干絵具、麻紙、木製枠

撮影:木田 光重


瀬戸内国際芸術祭2022 SETOUCHI TRIENNALE 2022

会期:2022年9月29日(木)〜11月6日(日)
会場:高見島・石田邸 (香川県仲多度群多度津町)
主催:瀬戸内国際芸術祭実行委員会

https://setouchi-artfest.jp/artworks-artists/artworks/takamijima/412.html


【ステイトメント】

 高見島板持地区の空き家を取材し、そこに残された家財道具や日用品、放置された庭の植物、あらゆる場所にあった事物を画面上で継ぎ接ぎしています。過去と現在、あちらとこちら、家主と自身。それぞれの地点は、少しずつ変化しながら、距離をおきながら、時に途切れてはどこかで確かに接続しているように感じてます。所在や時間を越えて、画面の中で隣り合う事物が新しい距離で重なり、関係を作ります。私にとって描くことは、関係のなかった事物と接点を生み出すことです。

 屋根裏の室内に張り巡らされた梁と、三角形の室内構造に添うようにして3 枚の絵画を配置し、イメージ(絵画)が空間に雪崩れ込むように共存させました。


【板持地区(高見島北部、無人の集落) の取材を通して】  

 2019年、3名の板持地区の元住民の方とともに集落を訪れました。かろうじて草木に覆われた柱だけが残り、ほとんど原型を留めていない家の跡の前で、「あの黄色い花が咲いているあたりが食卓だった。」「あの木が倒れているところが寝室だった。」と指を差しながら教えてくださいました。母親がよく作ってくれた料理、兄弟とけんかしたこと、 友達としたままごと遊び。身振り手振りを添えて、溢れるように話してくださいました。元住民の方の目に浮かんでいる、確かにそこにあった景色を想像しながら、黄色い花や倒れた木を眺めました。「ない」ところに「あった」ものを想像する、この場所に元住民の方と居合わせたことが特別な体験になりました。

 2022 年、3年後の板持地区は家屋の倒壊や集落への猪の侵出が進み、さらに荒廃していました。凄まじい様子に自然の猛威や抗えなさを感じました。今回の取材で一番気に留めたのは、島に残る戦争の気配です。食器棚や箪笥の中、子どもの学習机などを覗くと、プロパガンダが書かれた急須や湯呑み、国策標語が繰り返し書かれた書写などが散見されました。島の穏やかな暮らしが戦争におびやかされた時代をそれらから想像しました。離れた国では今日も続く戦争が、 たった77 年前にこの国、この島にもあったという事実を、家に残されたそれらから改めて感じることができました。この数年の取材で出会ってきたものは、自身が生きてきた時代や、暮らす地域とは異なる、本来自身とは関係のないものばかりです。しかし繰り返す取材の中、それらとは距離や違いがあるだけで、地繋がりで接続し、少しずつ、そして確実に関係しているのではないかと考えるようになりました。島でおこなった取材は、そんな関係にただ気が付きにいくことだったように思います。

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